兵庫医科大学/兵庫医科大学病院 麻酔科学・疼痛制御科学講座

教授 多田羅 恒雄

教授 多田羅 恒雄-兵庫医科大学 麻酔科学・疼痛制御科学講座

専門性と多彩なプログラム

これにより麻酔科標榜医の資格を取っておけば、他科に進んだ時でも、麻酔科で学ん だ知識・技術が、病棟の重症患者の全身管理や緊急時の対応に大きく役立ち、患者様へよい医療を提供することが可能になるでしょう。
また、麻酔科の知識や技術をさらに発展させ、急性期や終末期医療における疼痛管理のエキスパートになることもできます。
希望により当院のペインクリニック部を研修することができ ます。そこでペインクリニックの認定医となり、ペインクリニックを開業する人も少なくありません。

麻酔科のイメージは少し変わりましたか?少しでも当大学麻酔科に興味をもたれた方は、気軽に下記までご連絡ください。

麻酔科とは

  • 麻酔科のイメージ

    みなさんが医学生だった頃、“麻酔科”に対してどんなイメージを持っていましたか?

    2004 年からスーパーローテーション研修が始まり、1,2ヶ月麻酔科を研修された方は学生のときと少し違う印象をお持ちかもしれません。麻酔科の特徴を一言でい うと“全身管理のエキスパート”です。最近は高齢化が進み、手術を受ける患者さんの年齢も高くなってきました。当然心臓や肺などの大きな合併症を持った手 術患者さんも増加してきますが、麻酔法の進歩によりこのような患者さんでも全身麻酔が安全に行えるようになりました。麻酔科医は、術前診察により患者さん のリスクを評価し、それにあった麻酔法を計画します。手術中は、リアルタイムにバイタルサインをチェックし、手術が円滑に進行するように外科医や看護師と チームワークを組みます。手術後も疼痛管理などを行います。このように、麻酔科医は、単に麻酔を行うだけではなく、“手術という大きなストレスから患者さんを守る”仕事をしています。

  • 麻酔科医のニーズ

    近年の医療ミスの増加により社会が病院に対する安全の要求はどんどん増しています。たとえば、病院の評価を行う日本病院評価機構という組織は、機能評価合格 のひとつの条件として常勤の麻酔科医がいることを挙げています。これは、社会が病院に対し、安全に麻酔・手術が行われることを強く求めている証といえま す。このような背景から麻酔科医の需要はどんどん高まっていますが、麻酔科医の数はまだまだ足りません。

  • 仕事の特徴

    麻酔科の特徴は仕事のオン・オフがはっきりしているところです。自分が麻酔を担当している間は、常に緊張を強いられますが、麻酔が終われば基本的にフリーで す。夜間など時間外は、当直医が担当し、安全性を高めるため当番性をはっきりさせています。これが、いつ呼ばれるかわからない受け持ち医制と大きく異なる 点です。麻酔科では密度の濃い仕事を行った上で、残りの時間は書物などを紐解く時間や休養の時間に充てることが可能です。特に女性医師が増加している現 在、家庭をもっても医師の仕事を継続できることは大きなメリットです。

「探究心」を育てることです。
時々結果が「予測」に反することもあります。その時に「なぜ結果が違うのだろう?」という疑問が生じるはずです。研修医の皆さん にはこの疑問を大切にしてほしいと思います。

Our mission & values

教授 多田羅 恒雄-兵庫医科大学 麻酔科学・疼痛制御科学講座
なぜ兵庫医科大学?

最近は、麻酔科の重要性が一般社会にも広く認識されるようになり、麻酔科医をめざす医師が少しずつ増加しています。麻酔を研修する場所として、大学病院、総 合医療センター、一般病院があります。それぞれの病院には特徴があり、麻酔の基礎を研修する上では自分が気に入った施設で研修するのがよいと思います。し かし、長い医師人生の中で少なくとも数年間は大学病院で研修を行うことを強く勧めます。なぜでしょう?

一つの理由は、症例の豊富さです。外科系全科の麻酔を研修できるのは当然ですが、低心肺機能のため他病院で「麻酔ができない」と言われた患者さんが、最後の 望みをたくして大学病院を訪れることも少なくありません。通常、大学病院には、近隣病院にはない最高の医療機器がそろっています。あと必要なのは、「こう いうリスクの高い麻酔こそ腕の見せ所だ!」という麻酔科医の気概です。若い研修医の皆さんには、このようなチャレンジ精神をもって困難に立ち向かってほし いと思います。その際には、十分な下調べや先輩医師とのディスカッションが必要であることは言うまでもありません。何の合併症もきたさず麻酔が無事終了す ればすばらしいことですが、うまくいかなった場合には何がいけなかったのかを反省し、それを次回に生かすことが大切です。麻酔科研修の最初の数年間は、年 間300以上の麻酔症例を担当しますが、決して惰性で麻酔をしてはいけません。一例一例を大切にする姿勢を養ってください。

もう一つの理由は、「探究心」を育てることです。

麻酔に少し馴れてくると結果を「予測」できるようになります。たとえば、吸入麻酔薬の濃度を上げると「そろ そろ血圧が下がるかな?」とか、硬膜外腔に局所麻酔薬を投与すると「だいたい何分後に血圧が下がるか?」、などです。この「予測」は危険をあらかじめ認識 するものであり、麻酔を安全に行うためには非常に大切です。麻酔症例を多く経験し、教科書等により常に結果をフィードバックすることにより「予測」が可能 になってきます。しかし、時々結果が「予測」に反することもあります。その時に「なぜ結果が違うのだろう?」という疑問が生じるはずです。研修医の皆さん にはこの疑問を大切にしてほしいと思います。先輩に聞いたり文献を調べても納得のいく答えはないかもしれません。この疑問が「探究心」につながります。

ご挨拶

教授 多田羅 恒雄-兵庫医科大学 麻酔科学・疼痛制御科学講座

私が個人的に興味を持っているのは、「輸液」です。このテーマに取り組むようになったきっかけは、研修医時代の経験です。当時、輸液は大量の晶質液を投与す るのが一般的でした。麻酔中に血圧が下がり、尿量が減少すると先輩から「hypovolemiaだから晶質液を全開で入れろ!」とよく言われました。長時 間の開腹手術でこのような輸液管理をすると術後肺水腫をきたし病棟で人工呼吸を余儀なくされることがあります。そのような時は、おきまりのように外科医か らは「手術中の輸液が多すぎたからだ」と言われ、外科医と麻酔科の先輩との間でバトルがあったことを思い出します。

当時の大量輸液の根拠は、「手術にはサードスペースという部位が生じ、そこに血管内の水が大量に移行する。その移行分をおぎなうだけの大量の輸液が必要」と いうものでした。しかし、この「サードスペース」という概念は生理学の教科書にはなく、周術期特有の用語です。私は、この「サードスペース」という用語に 疑問を持ち、いろいろ文献を調べてみましたが、結局その本態はよくわかりませんでした。最近になってこの「サードスペース」の存在が疑問視され、「サード スペースに移行する水の量はそれほど大量ではない」とする考えが主流になっています。もし、これが本当だとすると手術中に大量の晶質液を投与する必要はな く、大量輸液はむしろ術後肺水腫などの危険を高めることになります。

この例のように臨床では以前は「常識」とされていたことが、現在は一転して「非常識」となることがあります。臨床では経験だけでものを言うのではなく、根拠 のあるデータが必要です。皆さんがもし何かに疑問や興味を持ったらそれを「探求する」心を養ってください。その具体的な実現が臨床研究です。研究といって も決して堅苦しいものではなく、日頃感じている疑問を少しでも解決するのが目的です。ただ、せっかく手間や時間をかけて臨床研究をやるからには学会発表だ けではなく必ず論文にしてください。この論文をもとに学位を取得することも可能です。いくらたくさん学会発表をしても論文がゼロでは業績にはなりません。 論文になるだけの臨床研究を行なうには、「十分な下調べ(文献調査)」、「研究方法の詳細な検討」、「最後までやり遂げる根気と熱意」が必要です。現在、 私たちの講座でも若手の先生による臨床研究がいくつか進行中です。今まいた種が数年のうちに立派な花を咲かせることを心から願っています。

皆さん、大学に対する印象は少し変わりましたか? 麻酔の初期研修を他病院で行った人でも大歓迎です。ぜひ一度こちらの麻酔科を覗いてみてください。

医師として一生麻酔科を続けるかどうか不安を持つ人も多いと思います。
そういった方のニーズにお応えして兵庫医科大学麻酔科学教室では多彩な受け入れプログラムを準備しています。